2024年、日本の新しい五千円札の顔として選ばれた、津田梅子。

新紙幣の発表後、「なぜ五千円札に選ばれたのか」、「どんな女性だったのか」という関心が一気に高まりました。津田梅子は、明治期に日本の女性教育を根本から改革した先駆者です。

今回は、津田梅子の生涯を振り返りながら、五千円札に描かれるにふさわしいその功績をご紹介します。

わずか6歳でアメリカへ

津田梅子は1864年、幕臣の家に生まれました。

津田梅子の人生を決定づけたのは1871年、わずか6歳で参加した日本初の女子留学生派遣でした。

当時の日本は明治維新直後。欧米文化を吸収し、近代国家を築き上げようと大きく動き出していた時代です。政府は未来の日本を担う女性の育成を見据え、少女5名をアメリカへ留学させました。その最年少が津田梅子でした。

6歳という幼さで家族と離れるだけでも大きな試練ですが、言語も文化も異なる異国の地で賢明に学び、英語を身につけていった津田梅子。アメリカの自由で開かれた教育に触れたことで「女性が自立して生きること」の重要性を強く実感していきます。

帰国後の苦悩-日本では理解されない「女子教育」への想い-

11年間の留学を終え、津田梅子が帰国したのは17歳のとき。

しかし、当時の日本では女性が学問を深める機会はほとんどありませんでした。さらに、「女性が高等教育を受ける必要はない」という社会的価値観も根強く残っていました。

アメリカで自由の空気と知識を身につけた津田梅子は、母国日本とのギャップに強く悩みます。自身が培った語学力を活かして、華族女学校（現:学習院女子中・高等科）で英語教師を務めるなど、活動をはじめますが、日本の女性教育の遅れを痛感しました。

この頃の津田梅子は、自身の生き方や社会のあり方に葛藤しながら、「女性たちが主体的に学べる場所を作りたい」という思いを強めていきました。

再びアメリカへ

20代半ばになった津田梅子は、1889年、より専門的な生物学と教育学を学ぶためにアメリカへ2度目の留学を果たします。

今度は、

①日本の女性に本格的な高等教育を提供すること

②女性が社会で自立して生きるための教育機関を作ること

という確固たる理念を持って渡米しました。

この留学で、津田梅子は単なる英語教師ではなく、教育者・改革者としての視点をさらに広げていきました。

日本女性のために女子英学塾を創設

1900年、津田梅子は念願であった女子英学塾を創設しました。これが現在の津田塾大学の前身です。津田梅子は、教育方針として「女性が自ら考え、判断し、生き方を選べる力を育む」ことを掲げ、当時の女性を家庭に閉じ込める価値観に挑戦しました。

女子英学塾のカリキュラムは、当時の良妻賢母を求める実務中心の教育とは一線を画し、英語教育に加えて、文学・理系科目・歴史なども取り入れた先進的なものでした。女子英学塾創設当初は、生徒数がわずか10名にも満たず、経営も苦しい状態でしたが、諦めず、寄付を募るとともに、時には自らの生活費を削って学校運営にあてました。

こうした献身的な努力が実を結び、女子英学塾は徐々に注目を集め、日本の女性教育の象徴として成長していきました。

2024年の新五千円札に選ばれた理由

2024年の新五千円札に津田梅子が選ばれた背景には、津田梅子の功績が現代社会にも深くつながっていること、そして、現代の日本が抱える課題に光を当てる象徴的な存在であることが挙げられます。

【津田梅子の功績】

①日本の女性教育の基礎を築いたこと

②国際的な視点を持ち、未来を見据えた教育を実施したこと

③困難な状況でも理想を貫き、実行したリーダーシップ

まとめ

いかがでしたか？

津田梅子の人生は、教育の力が人を変え、社会を変えることの実例そのものですね。津田梅子の考え方や行動力は、現代に生きる私たちにも勇気を与えてくれます。

女子英学塾（津田塾大学）は、今も多くの女性が学び、社会で活躍するための基盤を提供し続けています。

そして、五千円札に描かれた津田梅子は、日本が未来へ向かって進むための象徴であるともいえるでしょう。