
ベアトリーチェに導かれた詩人
-ダンテ・アリギエーリの思想-
イタリアの文学の父、ダンテ・アリギエーリ(Dante Alighieri)。ダンテ・アリギエーリ(以後ダンテ)は、地獄・煉獄・天国の三部構成からなる不朽の長編叙事詩『神曲』を生み出したことで有名です。そして、この『神曲』は、イタリアのルネサンス文化に影響を与えました。
今回は、ダンテについて、彼に影響を与えたベアトリーチェ、彼の作品が与えたルネサンス文化への影響、そしてオーギュスト・ロダンの『考える人』との関係をご紹介します。
イタリアのフィレンツェに生まれた詩人-ダンテ・アリギエーリ-
ダンテは1265年(日本でいうと、鎌倉幕府の時代)、イタリアのフィレンツェで金融業を営む小貴族の元に生まれました。幼少期からラテン語や哲学、文学を学び、詩の才能を開花させていきます。13世紀末のフィレンツェは、商業と政治の中心地でありながら、内部抗争に揺れる不安定な都市でした。
ダンテ自身も政治に深く関与し、激動の時代を生き抜いた一人です。ダンテは「ホワイト派」と呼ばれる政治勢力に属していましたが、政争に敗れ、1302年には終生の追放処分を受けてしまいます。以後、ダンテはフィレンツェに戻ることなく、各地を放浪しながら創作に打ち込みました。ダンテの代表作『神曲』は、彼が追放先で晩年に書き上げたもの。1321年ラヴェンナの地でその生涯を閉じました。
ダンテとルネサンス文化の関係
ダンテは「中世最後の詩人」と称されることが多い一方で、ルネサンス文化を準備した「最初のルネサンス人」とも評価されます。その理由は、『神曲』が用いたイタリア語(トスカーナ地方の方言)によって、ラテン語中心だった学術・宗教の世界に公用語の可能性を示したこと、そしてダンテの作品に漂う「人間中心主義な視点」が、後のルネサンス文学や芸術に大きな影響を与えたことにあります。
ルネサンスとは、14世紀から16世紀にかけてヨーロッパで起こった文化・芸術・思想の大きな革新運動です。古代ギリシャ・ローマの文化を理想とし、人間の理性や個性、美を重視する「人文主義」が広まり、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロが活躍し、近代ヨーロッパ文化の基盤が築かれました。宗教中心だった中世に対し、ルネサンスは人間中心の新しい価値観をもたらしました。
ルネサンス文化に影響を与えたとする、ダンテの『神曲』は、個人の内面と魂の救済に焦点を当て、人間存在の意味を深く問いかけます。この点においてダンテの詩はルネサンス期の「人物主義」のはじまりを感じさせるものであり、ダンテの思想はルネサンス文化で活躍した芸術家たちにも影響を与えました。
ダンテの『神曲』とベアトリーチェ
ダンテの代表作『神曲』は、ダンテ自身が主人公として登場し、地獄・煉獄・天国を旅するという物語で、ダンテの人生と思想が色濃く反映されています。
この旅には重要な案内人がいます。地獄と煉獄を導くのは、古代ローマの詩人、ヴェルギリウス。そして天国の旅を導くのが、ダンテの永遠の理想の女性ベアトリーチェです。
ダンテの詩にしばしば登場するベアトリーチェ・ポルティナーリは、実在の人物でした。ダンテが9歳のときに出会い一目惚れをします。そしてダンテが18歳になった時ベアトリーチェと再会を果たします。この時、会釈のみでしたがダンテはベアトリーチェに取り憑かれたように恋い焦がれました。その後ダンテは想いを打ち明けることはできず、そのままベアトリーチェは24歳という若さで亡くなります。ダンテにとってベアトリーチェは、ダンテの精神的、宗教的な理想像として昇華されていきます。
『神曲』では、ベアトリーチェはダンテを天国へ導く神聖な存在として登場します。ベアトリーチェは純粋な愛と信仰を象徴し、「人間の魂が救済へ至るための導きの象徴」ともいえるでしょう。
オーギュスト・ロダンの「考える人」とダンテ
「考える人」と聞いて思い浮かべるのは、フランスの彫刻家オーギュスト・ロダンの代表作ではないでしょうか。
実はこの作品は、ダンテの『神曲』に着想を得て制作され、「地獄の門」という大作の一部として構想されました。
「考える人」は、地獄の門の前で思索にふけるダンテ自身を表したとも、ロダン自身の姿とも、あるいは地獄に堕ちた人々を見つめている存在とも解釈されています。もし、ダンテを表しているという説が正しければ、この像は『神曲』冒頭で描かれる「人生の道に迷い込んだ男」の象徴といえるでしょう。
彫刻家ロダンにとっても、ダンテの思想は大きなインスピレーションの源でした。
まとめ
いかがでしたか?
ダンテ・アリギエーリはただの詩人ではありません。ダンテは、愛と信仰、理想と現実のはざまで葛藤しながら、魂の救済を求め続けた旅人でした。
ダンテの精神は、現代を生きる私たちにも問いかけています。「あなたはどこから来て、どこへ向かっているのか」・「あなたにとっての救いとはなにか」。その問いに真摯に向き合うことこそがダンテの作品の核心に近づくことになるでしょう。
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